植物が育つ「土」の基本

植物を育てるのに必要な土。初めて庭づくりをする人にとって、植物を育てるのに適した土を見分けるのは難しいですよね。しかし、良い土にはいくつかの条件があるので、それを知ることで土づくりに役立てるでしょう。そこでこの記事では、良い土の条件や土壌改良のしかた、肥料の選び方などについて解説します。

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植物が育つ良い土の条件とは

植物を育てる上で基本となる土づくり。この作業をしっかりと行うことで、植物がのびのび育つようになります。最初に、植物に良いとされる土の条件を解説します。

① 通気性・保水性・排水性・保肥性のバランスが適度に取れている

植物が育つには新鮮な空気が欠かせません。植物の根は土の中で呼吸しているため、通気性が悪いと酸素不足になります。そのため最悪の場合、根腐れすることも。排水性が良ければ、土の中の古い空気が排出され、新鮮な空気を取り込みやすくなるのです。

土の排水性の良し悪しは、見分け方にポイントがあります。たっぷり水やりをして、すぐに鉢底から流れ出てくれば排水性が良く、逆に時間がかかる場合は悪いと言えます。

しかし排水性が良すぎても水分が保たれず土が乾燥しやすくなるため、適度な保水性がなければいけません。また、水やりで肥料分が流れ出にくいことも良い土の条件です。

② 異物の混入がなく、適正な酸度である

害虫の卵や幼虫、雑草、小石などが土の中に混入していると、植物が育ちにくくなります。庭づくりをする際には、できるだけこのような異物が混入していない土を使用しましょう。

また、植物は基本的に中性~弱酸性の土で育ちやすいとされています。酸性やアルカリ性が強い土は養分を吸収しにくく、根が育たない原因となるので注意が必要です。

③ 重さが軽すぎず、重すぎないこと

さらさらした軽い土は株が倒れやすく、粘土のように重い土は排水性が悪くなります。植物を育てるのには、重さが軽すぎず、重すぎない「壌土(じょうど)」と呼ばれる土などがおすすめです。

④ 微生物が育ちやすい

微生物は土の中の物質を循環させる働きをするため、植物に良い環境をつくるのに欠かせない存在です。また微生物は多様性があるため、バランスが取れていれば良い土の状態を保てます。

微生物の中には有害なものも存在しますが、他の種類が増えると繁殖を抑制するため、その結果植物が病気に強くなります。

良い土をつくるための土壌改良とは

土壌改良とは、植物の栽培に適した土の状態にすることです。土壌改良しない土は通気性が悪く、硬くなります。そのため栄養が行き届かなくなり、植物の生育を妨げてしまいます。

植物が栄養や水分を吸収しやすくするには、土壌改良をして良い土をつくることが大切。土壌改良の主な方法は、以下の通りです。

【必要な材料】

  • 腐葉土
  • 堆肥
  • 肥料
  • スコップ

【方法】

  1. 地面に生えている雑草を抜き、土を掘り起こす。
  2. 石や土の中に残っている植物の根を取り除いてから、地面を軽くならす。
  3. 土の上に腐葉土、堆肥、肥料をふりかける。
  4. ③と土が十分混ざるようにスコップで耕し、最後に整地をする。

この作業後、1週間程度寝かせてから植え付けを行うのがおすすめです。

土壌改良材が必要な理由と種類

土壌改良を行う時に、土壌改良材を使用すると便利です。土壌改良材には種類がありますが、ここでは有機物のものをいくつか紹介します。

土壌改良材は良い土づくりに欠かせないもの

土壌改良材とは、植物が良く育つ土に改良するためのもの。土の通気性や保水性、排水性、保肥性のバランスを良くするために欠かせません。

土壌改良材である有機物は微生物のエサとなります。そのため土に混ぜて土壌改良を行うことで、微生物の働きを活発にできるのです。次に有機物の主な土壌改良材の種類を紹介します。

① 腐葉土

落ち葉や枝をじっくり発酵させたもの。土をやわらかくし、微生物が増えると土の栄養分も増します。通気性・排水性・保肥性が良いため、やせ細った土を改良する時におすすめです。

② バーク堆肥

バークとは針葉樹や広葉樹の樹皮のことで、じっくり発酵させたものがバーク堆肥です。通気性・保水性・保肥性・排水性に優れ、土をやわらかくしてくれます。

③ 牛糞

牛の糞を醗酵させたものが牛糞です。牛の糞にはエサである草やワラの繊維質が豊富に含まれているため、土をやわらかくしてくれます。しっかり熟成された牛糞なら、ニオイも気になりません。

④ くん炭

もみ殻を炭化したくん炭は、通気性や保水性に優れています。アルカリ性であるため、酸性の土を中和するのにも使えます。消臭効果があり、堆肥のニオイなどが気になる時にもおすすめです。

肥料の選び方のポイント

植物を育てる上で、土壌改良とは別に、肥料を加えることも重要です。さまざまな肥料がありますが、最適な肥料を選ぶためには、まず肥料について知ることが必要です。次は、肥料について見ていきましょう。

肥料の成分を知る

肥料によく使われる成分は、チッソ・カリウム・リンサンの3つです。

  • チッソ…葉を大きくする作用があり、「葉肥」とも呼ばれます。植物の生長に欠かせない成分ですが、与えすぎると病害虫の被害を受けやすくなるので注意が必要です。
  • カリウム…気温や、病害虫に負けない丈夫な植物に生長するために必要な成分。不足すると病害虫に侵されやすくなります。
  • リンサン…葉や根の生長だけでなく、開花や結実をサポートする働きがあります。

元肥と追肥の違いを知る

元肥(もとごえ)は、植物の植え付けや植え替えをする時に最初に与える肥料です。土と混ぜてよく耕してから植物を植えます。

また、追肥(ついひ)とは、植物が生育する途中で定期的に与える肥料のこと。ほとんどの植物の場合、元肥を与えていても時間の経過とともに効果が薄れてくるため、追加で肥料を与える必要があります。

肥料の形状の違いを知る

肥料の形状には、主に固形タイプと液体タイプがあります。

固形タイプには、粒状や粉末で土に混ぜて元肥として使うものと、土の上にふりかけて追肥に使うものがあります。また、有機質である油かすなどを混ぜた肥料や、チッソ・カリウム・リンサンを混ぜ合わせた化学肥料など、配合される原料もさまざまです。

一方、液体肥料は即効性に優れており、水やりのタイミングで追肥として使われるのが一般的。水に薄めて使うものがほとんどですが、なかにはそのまま使えるものもあります。

落ち葉を使って腐葉土をつくってみよう

腐葉土は自分でつくることができます。完成までに少し時間はかかりますが、作り方は簡単です。腐葉土に向いている落ち葉が自宅の近くで集められる場合は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

腐葉土に使う葉について

落ち葉でも腐葉土をつくるのに適したものと、そうでないものがあります。

腐葉土に向いている葉:ケヤキ、クヌギ、ポプラなど
腐葉土に向いていない葉:イチョウ、カキ、サクラ、マツ、ヒノキ、カヤなど

針葉樹の葉や水分や樹脂分を多く含んだ葉は、腐りにくいため腐葉土には向きません。

腐葉土のつくり方

【必要な材料】

  • 落ち葉
  • 米ぬか
  • ビニール袋

【作り方】

  1. 集めた落ち葉に1〜2つかみ程度の米ぬかをふりかけ、そこへたっぷりの水をかけてからよく混ぜる。
  2. ①をビニール袋にびっしり詰めて、袋の1番下の両端をハサミで切ってから、口をゆるめに縛る。
  3. 日当たりの良い場所にビニール袋を置き、定期的に上から揉み込む。乾燥していれば水を入れる。
  4. 落ち葉の形が崩れてきたら完成。

培養土もつくっておくと便利

土壌を改良するために用いる土に混ぜる腐葉土とは異なり、培養土は基本的にそれだけあれば、植物を育てることができます。培養土は、先に紹介した土壌改良材を用いることで、簡単につくれます。

材料は、土と土壌改良材と肥料の3つ。土は、できるだけ一度も植物を育てたことのないものが望ましいでしょう。また、サラサラした細かすぎる土や、粘土のような土も避けた方が良いです。

この土に、腐葉土などの土壌改良材と肥料を混ぜ合わせます。ポイントは、これらを混ぜ合わせた後、しばらく良く寝かせて熟成させること。微生物の力によって有機的に混ざり合い、植物が育ちやすい培養土となります。

良い土から素敵な庭づくりを始めよう

植物を育てるために土づくりはとても重要です。土も愛情を込めてお手入れすれば、植物も元気に育つでしょう。これから庭づくりを始めようと考えている人は、さっそく土づくりから始めてみてはいかがでしょうか。