「入浴」編健康になる! お風呂の入り方

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「入浴」編 健康になるお風呂の入り方

一日の終わりにゆったりつかる温かいお風呂は、気持ち良いものですね。医学的に見ても、入浴には体に良い作用があります。その効果はシャワーだけでは得られません。毎日、40度の湯船に10分間肩まで入る。この入浴法が、健康づくりに大いに役立ちます。医学的に正しい手順で、安全かつ効果的に入浴を楽しんでください。

《入浴の順序》

  1. 入浴前に水分をとる
  2. かけ湯をする(シャワーで可)
  3. 半身浴
  4. 全身浴
  5. 洗い場で髪や体を洗う
  6. 全身浴
  7. お風呂から出る
  8. 水分をとる
  9. 休息

入浴すると汗で約800mlもの大量の水分が失われます。まず、入浴前に水分をとることを心がけ、かけ湯、半身浴の順に少しずつ体を慣らして肩までお湯につかります。冬場、寒い脱衣所からすぐに熱いお湯に入ると、温度差で血圧が急上昇するので、ご高齢の方などは特に危険です。できれば脱衣所はリビングに近い温度に暖房し、浴室も湯船のフタを開けて暖めておきましょう。
入浴はわずかな温度の違いで、体に及ぼす効果は異なってきます。体のバランスを調整する自律神経のうち、ぬるめのお湯では副交感神経が優位になってリラックス状態に、熱めのお湯では交感神経が優位になって興奮状態になります。その働きが42度を境に切り替わるのです。心身にやさしいのは40度以下のぬるめのお湯ですが、目を覚ましたいときやもうひと頑張りしたいときには、42度の熱めのシャワーでスイッチを入れると良いでしょう。

教えてくれるのは、東京都市大学 人間科学部早坂 信哉教授

【プロフィール】

お風呂と温泉の正しい情報を伝える温泉療法専門医。東京都市大学人間科学部教授。一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長。著書『たった1度が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)

入浴が体に良い5つの理由

温熱作用

体の表面で温められた血液が全身をめぐり新陳代謝が活発に。関節の緊張がほぐれ、肩こり、腰痛が緩和されます。

静水圧作用

足に溜まった血液や体液が水圧によって心臓に押し戻され、足のむくみを解消。血流がよくなり、疲労回復効果も。

粘性・抵抗性

水中で素早く動けないのはこの性質のため。適度な負荷がかかり、手足のストレッチなどの運動効果が高まります。

浮 力

肩までお湯につかると体重は約10分の1に。体が軽くなってリラックスでき、関節への負担が軽減されます。

清浄作用

お湯につかるだけで毛穴が開くので、タオルでゴシゴシこすったり、石鹸を使わなくても皮膚の汚れが十分に落ちます。

症状別 効果的な入浴方法

基本の入浴法を応用して、お湯の温度、つかる時間を意識することで、さまざまな病気の予防や改善に入浴を活用できます。ここでは、症状別にいくつかの入浴法をご紹介しましょう。

肩こりに効く入浴方法

肩こりは、肩の周辺の筋肉が緊張して硬くなり、血流が悪くなることで生じます。これを改善するには、ぬるめのお湯に入って血流を良くし、筋肉を弛緩させると良いでしょう。
まず、肩までお湯につかって体を温め、湯船で肩や首を回すなどの運動をして筋肉をほぐします。慢性的な肩こりは、40度のお湯に毎日10分くらい入ると良いでしょう。ぬるめのお湯は副交感神経を優位に働かせ、心身の緊張をほぐしてくれます。

ぐっすり眠るための入浴法

人は体温が下がって行くときに眠気を感じます。普段から寝付きが良くないと感じるようなら、就寝の1~2時間前に40度のお湯に20分くらい入って体をよく温めてあげると、ちょうど寝る時間に体温が下がって、すんなりと眠りにつくことができます。
脳が興奮して眠れないようなら、ぬるめのお湯にゆっくり入ると良いでしょう。副交感神経を優位にして脳をリラックスさせることで、寝付きやすくなります。

筋肉痛に効く入浴法

筋肉痛の原因は、疲労物質である乳酸が溜まったり、筋肉が細かく断裂して筋線維が傷むためです。どちらの場合も、ぬるめのお湯で体を温めて血流を良くすることが改善のポイントです。
だだし、激しい運動の後は、すぐにお風呂に入らずに、筋肉に血液が行きわたるまで1時間以上おいてからの入浴を心がけましょう。
日中に運動した日は、夜にぬるめのお風呂にゆっくり入ることが、筋肉痛の予防、軽減につながります。

冷え性を軽減する入浴法

冷えは、寒い所で手足の先に血流がまわりにくくなって生じます。手足が冷たくて不快に感じたり、眠れないようなら、寝る1~2時間前に40度のお湯に15分ほど入ってじっくり体を温めましょう。
血管を広げる働きのある炭酸ガスの入浴剤や柚子を入れるとより効果が高まります。
また、入浴の最後に42~43度で追い炊きをして徐々にお湯の温度を上げると、温まったという満足感が得られ、冷え性の改善につながります。

ダイエットに効果的な入浴法

実は、お風呂に入って汗をかいてもカロリーはほとんど消費されません。ただし、入浴によって体の表面に血液がまわるため一時的に胃腸の働きが抑制されることを利用して、食事の前に40度のお湯に15分ほど入ることで食欲を抑える効果が期待できます。
寒さが気にならなければ、30度のかなりぬるいお湯でストレッチや軽い運動をすると体内で熱がつくられカロリーを消費できます。ぬるいお湯に入った後は、追い炊きで体を温めましょう。

花粉症&鼻づまりに効く入浴法

体や髪についた花粉を落とすためにも毎日の入浴がお勧めです。血流を良くし、鼻の粘膜の腫れを取る効果もあります。熱めのお湯はかゆみの原因となるヒスタミンを生じさせるので、ぬるめの温度で入りましょう。
入浴時は鼻から湯気を吸い込むことを意識すると、花粉やアレルギー物質などを洗い流し、鼻腔が温まって痰や鼻水が排出されやすくなります。ハッカやミントなど鼻がスーッとするアロマをほんの少し加えても良いでしょう。

お風呂の新常識 Q&A

医学的な研究などにより、お風呂の常識が少しずつ変わってきています。ここでは意外に知られていないお風呂の新常識をご紹介します。

半身浴より全身浴が効果的?

全身浴の方がさまざまな効果が

半身浴で長くお風呂に入って汗をかいても、ダイエット効果はほとんどありません。むしろ、前述のようにぬるいお湯の全身浴で運動をした方がカロリー消費ができます。また、全身浴の方が水圧が体全体にかかり、足のむくみ解消につながりやすいとされています。半身浴では十分な水圧が得られません。
さらに、全身が温まって血流が良くなるので、肩こりなどにも効果的。半身浴は、心臓や肺に負担をかけない入り方なので、ゆっくり長く入浴したいときにいいでしょう。

二日酔いはお風呂で治る?

治らないが二日酔いが早く抜けるかも

まず水分を十分にとって脱水症状を改善してから、38度のお湯に15分ほど入浴すると水圧で利尿作用が働き、また血流が良くなって二日酔いが早く抜ける可能性があります。

  • 飲酒直後の入浴は危険です。

風邪でもお風呂に入って良いの?

37度前後の微熱であれば大丈夫

小児科医の研究で、お風呂に入った子どもと入らなかった子どもとでは、風邪の治りに変わりはなかったという結果があります。40度のお湯に約5分、疲れない程度の入浴で、寝付きがよくなり、体調の回復につながります。

  • 高熱の場合は入浴を控えてください。

一番風呂は体に良くない?

体にやさしいのは二番風呂以降

日本の水はミネラル分の少ない軟水です。そのお湯と体の皮膚の内側の体液との濃度に違いによって肌がピリピリするような刺激があります。皮膚が乾燥していると、より刺激が強く感じられます。二番風呂以降のお湯は、人の皮膚から溶け出したミネラル分で体の浸透圧に近くなり、刺激が少なくなります。ミネラル分は、入浴剤でも補うことができます。
また、寒い時期に一番風呂で浴室が温まっていない場合は、温度差による血圧の上昇にも注意が必要です。前述の通り、入浴前にお風呂のフタを開けて浴室を暖めておきましょう。

冬はお風呂に入るけど、夏はシャワーだけで十分?

夏もお風呂に入ることをおすすめ

夏は汗などで体が汚れやすいので、入浴した方が毛穴が開いて汚れが落ちやすく、皮膚を清潔に保つことができます。
また、冷房で体が冷えてしまった場合、湯船で温めてあげることは健康面で効果的です。冷え性の方は、毎日お風呂に入ることをおすすめします。
ただし、夏に冬用の入浴剤を使うと温まりすぎることがあります。重曹(炭酸水素ナトリウム)が入った入浴剤は、湯上がり時にさっぱりと感じられて夏向きです。

水まわりリフォーム

ユニットバスなどの水まわり設備の機能は年々進化し、浴室内の快適性はもちろん、省エネ機能やお手入れのしやすさなど、使い勝手が格段に向上しています。毎日使うものだからこそ、適切な時期にリフォームをご検討ください。