落葉樹の中高木、株立ちの剪定
不要枝を整理して日当たり・風通し向上 -ヤマボウシ編-
教えてくれるのは、住友林業緑化のグリーンサポーター 村上 明氏(光樹園)
ヤマボウシは、白い花を法師の被る頭巾に見立てたのが名前の由来。6月頃に白い花を咲かせ、9~10月に赤く実が熟します。実は食べることもできます。
花の花弁のように見えるところは総苞片と呼ばれる部分です。紅花の咲く品種、枝垂れ状の品種、矮性種など様々な園芸品種があります。株立ちでも一本立でもシンボルツリーとして植えることができます。
病害虫には比較的強い樹木ですが、まれにカミキリムシの幼虫が発生するので注意が必要です。花後と紅葉時期の施肥がお勧めです。すす病を抑えるために風通しの良い場所に植えます。
すす病:葉や枝、幹などの表面が黒色の菌糸で覆われる病気。葉に発生すると光合成が阻害され樹勢が低下する
今回の剪定は、込み合った枝を整理して日当たりをよくする「透かし剪定」です。樹形を乱し、樹木の生長を妨げる「不要枝」を取り除くことで、光と風が樹木の内部まで届き、木全体にまんべんなく花芽がつくようになり、健康で美しい姿を保つことができます。
自然の樹形を生かすには、枝の途中から切ることは避け、かならず枝の分岐点で切るようにします。1箇所から3本以上の枝が出やすいので、込み合っている部分をすっきりさせるため、間引く場合もその分岐点で切りましょう。
太い枝の剪定は、落葉期に行うとよいでしょう。落葉期は花芽と葉芽がはっきりとわかるので、花芽を切らないように注意しましょう。
剪定のポイント
今回、剪定を行ったのは、こちらのヤマボウシ。まだ、それほど大きくなく、枝葉が込み合っているわけではありませんが、ポイントを絞って、透かし剪定をしました。
ポイント1 上部の不要枝をカット
今回は、木の上部から下部に順番に剪定していきます。まずは、上部の徒長枝をカット。最初に木全体の輪郭を見て、飛び出している枝をチェック。その枝の分かれ目から切って整えていきます。
また、枝葉が密集している部分は、内側に向かう不要枝などを切り、光と風が樹木の内部まで届くようにします。
徒長枝の剪定
樹木全体の輪郭から飛び出した徒長枝を見つけます。
その枝を分岐点(付け根)からカットします。
枝の付け根でカットしづらい場合は、いったん途中でカットします。
その後、もう一度、赤線部分でカットするとよいでしょう。
込み合った枝の剪定
丸く囲んだ部分の枝葉が込み合っています。
その部分をよく見ると、1箇所から枝が四方に何本も出ていることがわかります。
そこで、枝を間引いていきます。
切るのは、枝分かれする付け根から。
最終的に枝を2本にしたらすっきりしました。
これで風通しも良くなります。
ポイント2 内側の不要枝をカット
株の内側が少し込み合っており、光が届かないために枯れてしまった枝もありました。そこで、込みすぎた枝を間引き、枯れ枝もカットします。
内側で込み合っている枝。でも、どれを切ってよいかわかりません。
近づいてよく見ると、内向き(矢印の方向)に生えて、他の枝とぶつかっている枝を発見。
こういったものを枝元から切ります。
枯れ枝の剪定
葉のついていない枯れ枝は枝元からカット。
枯れ枝かどうかわからない場合、表皮を削ってみるとわかるかもしれません。まだ生きている枝は、組織に水気があるため、緑がかった白っぽい色をしています。枯れている枝の場合、表皮と同じように硬く乾いていて、完全に白くなるか、または茶色っぽくなっています。
ポイント3 邪魔になる枝をカット
今回、ヤマボウシが植えられていたのはカーポートの隣。枝が伸び、駐車の邪魔になりかけてきたので、枝を整える必要がありました。
右側がカーポート。枝葉が駐車の邪魔になるからといって、上の赤いラインで一直線に切るのはよくありません。切った部分から細かな枝がいろいろな方向に分枝し、樹形が乱れる恐れがあります。
そこで、それぞれの枝をよく観察し、枝分かれしているところでカットしていきます。
太い枝をカットするときも、脇枝のある部分でカット。
脇枝が生長していくと、切った部分も目立たなくなります。
駐車場側に張り出した枝葉。
邪魔になる枝を、枝元から切ることによって、自然な雰囲気を保つことができました。
剪定完了!
今回剪定したのは、まだ若いヤマボウシで、それほど大きな変化はありませんが、樹形が整い、風通しも良くなったので、今後の生長に好影響を与えることでしょう。
木は一気に短く剪定すると、活力のある根と、少なくなった枝葉のバランスが崩れ、徒長枝がたくさん伸びるなど、大きく樹形を乱します。俗に「木が暴れる」と言いますが、そのようにならないためにも、時々徒長枝がないかを確認し、こまめに少しずつ剪定していくことがお勧めです。
太い枝の剪定は、落葉期に行うとよいでしょう。落葉期は花芽と葉芽がはっきりとわかるので、花芽を切らないように注意しましょう。
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