落葉樹・カエデ科の剪定

休眠中の11月~12月に行う透かし剪定 -イロハモミジ編-

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教えてくれるのは、住友林業緑化のグリーンサポーター 関光則氏(有限会社関造園土木)

今回は、カエデの仲間の透かし剪定を、イロハモミジを例にご紹介します。

落葉樹は、夏に栄養を蓄えて、冬にいっせいに葉を落として休眠します。

そのため、一般的に落葉樹は12月から2月頃までの休眠時に剪定することで、木への負担を少なくすることができます。ただし、カエデの仲間は、他の落葉樹より休眠期間が短いため、剪定は12月までに済ませましょう。

<ご注意>

カエデの仲間は休眠から目覚めるのがとても早く、だいた1月頃には木が活動を始め、根から水を吸い上げるようになります。

それ以降に枝を切ると、下の写真のように樹液がどんどん流れてしまい、木にダメージを与え、樹勢が弱まってしまうのでご注意ください。

2月初旬に枝を剪定すると、すぐに樹液があふれてくる。

剪定のポイント

剪定を行うのはこちらのモミジです。2~3年ほど剪定していない状態のため、今回は樹形を整え、葉が茂ったときにも風通しと日が当たりやすいように透かし剪定を行います。このモミジの場合、高さは十分なので、今回は高さを抑えて、横への広がり感が出るように枝葉を整えていきます。

もし、より高く背丈を伸ばしたい場合は、横(まわり)を切り詰めて、枝の生長が上に向くようにします。
シンボルツリーとして見栄えを良くしたいのか、目隠しの役割で背を伸ばしたいのかなど、その木の役割によって剪定の方向性は異なります。

ポイント1 高さを整えるため上部を剪定

最初に高さを整えるため、上部の枝の剪定から行います。2~3年ほど剪定していない状態なので、今回は元の樹形に近づけるため、生長した2年分ほど枝を切ります。
ただし、最初からばっさりと2年分切るのは不安な場合があると思います。そこでまず、上部全体を1年分ほど切り戻して、全体を眺めてから判断するようにします。

モミジの場合、1年ごとに大きく枝分かれして生長していきます。そのため、写真1・2のように、枝分かれのもとを数えていくと、おおよその生長具合がわかります。
枝の生長は、1つの木ならだいたい同じ程度です。したがって、枝を同じぐらいの長さで切っていけば、おのずと樹形が元のように整っていきます。ただし、中には急生長して樹形を乱す徒長枝もあります。そのような枝は、枝元から切りましょう。もし、木の大きさを一定に保つなら、以前剪定した位置まで切り戻すのも1つの方法です。

1. 1年間で生長した分を剪定

まずは、上部全体を1年分の生長程度(今回は50センチ程度)で切っていきます。

枝を切るのは、枝の分かれ目です。基本は、細い枝を残して、太い枝を切ります。太い枝を切り、柔らかい枝を伸ばすことで、枝葉が風になびくようになり、樹形がモミジらしいやわらかなものになります。

枝は分かれ目で切ることで、枝に上がってきた樹液が残した枝の方に流れていくようになり、切り口の治癒も早くなります。枝分かれのないところで切ってしまうと、樹液が行き場を失い、そこから細菌が入りやすくなったり、切った部分から新たな枝がいろいろな方向に分枝して樹形が乱れる場合があります。

剪定バサミである程度の太さまでの枝は切れますが、切りにくい場合はノコギリを使いましょう。

写真3ぐらいの太さになったらノコギリを使った方が切りやすいでしょう。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

2. 2年間で生長した分を剪定

1年分を切り戻し、少し離れて全体の様子を見ます。もう少し剪定した方がさっぱりとするので、予定どおりもう1年分(50cm程度)切っていきます。

全体を切ったら、少し離れて見て、バランスの悪い枝は、長さを切りそろえていきます。

剪定の際は枝の分かれ目で切ります。

枝の大きさを抑えるために、最も太い幹[A]を切り、外側に広がる枝[B][C]を残します。

写真2で残した枝[B][C]も、そのままでは長すぎるので、全体的な高さを揃えるために点線の位置で切ります。

枝の分かれ目から3本枝が出ている場合は、真中の1本を切るか、方向が寄っている2本のうち1本を切るとよいでしょう。

どれを切るべきか迷った場合は真中を切りましょう。

ポイント2 外まわりの見栄えを良くする

上部を剪定したら、外まわりも整えていきます。外側に飛び出している枝や、他の枝と絡んでいる枝、下向きに生えている枝などを整理して、見た目を良くします。外側に広がる枝先をなるべく残すようにすると、モミジらしいやわらかな枝ぶりになります。

混み合っている枝や、全体のバランスを見て、外に伸びすぎている枝などを切ります。

カエデ科の場合、枝先がピッと上向きに上がっていると、葉がついたときに見栄えが良くなります。外側に広がる枝先はなるべく生かすようにしましょう。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

【ひと口メモ】

剪定を外側から始めるか、内側から始めるか。

外側から剪定し、その後、内側を整える
内側から剪定し、その後、外側を整える
木の内側に枝葉が茂りすぎて、木の内側の様子がわからない場合は、(2)のとおり、内側から剪定するとよいでしょう。内側を先に整理することで、全体の枝葉のボリュームがわかり、風通しや日の当たり具合などが見えてきます。その後で、高さを整えた方がバランスがとりやすいでしょう。

今回の場合は、葉がないので、内側の状況が見え、最初から全体像がわかります。このような場合は、(1)のとおり、外側から剪定すると良いでしょう。今回は、上部を切り戻すので、まず上部を剪定し、その後、まわりを剪定し、最後に内側を整えていきます。

ポイント3 木の内側を整える

外側を剪定し終えたら、内側を整えていきます。モミジなどの落葉樹の冬期剪定の場合、葉がないので、どれぐらい切れば良いのかわかりにくいと思います。あまり切りすぎると、葉が出た後もさみしい雰囲気になってしまうので、切りすぎに注意しましょう。他と交差している枝や、今後他の枝の邪魔になりそうな枝など、確実に不要な枝を剪定していきます。

あまり集中して、一部だけしか見ないで切っていくと、切りすぎてしまうことがあります。ちょっと剪定したら、一歩引いて全体を見渡し、バランスを考えるようにしましょう。

1回で剪定を完璧にする必要はありません。葉が出てきてから細かな部分を調整しても良いのです。

この枝は上部を剪定しても、生長するとまた左右の枝と絡んでしまいます。枝分かれした元(点線部)で切った方がよいでしょう。

他の枝と交差してぶつかっている枝なども枝元から切りましょう。

ねじれて生えている枝が、上の方で他の枝と交差して邪魔になっていました。

写真3のような場合は、枝元から切ってしまいましょう。太い枝を切ったときは、保護剤を塗って菌が入るのを防ぎましょう。

たくさんの枝で混み合っている部分。この場合は、上向きの枝を切ります。

上向きの枝を切ることで空間ができ、風通しが良くなり、葉がついた時の全体のバランスが良くなるでしょう。

2本の枝が平行に伸びて、先の方で次の枝が交差しています。

そこで、下の方の枝を途中で切り、枝が生長する方向も変えました。これでお互いが邪魔になりません。

生長すると他の枝の邪魔になりそうな新芽も切っておきます。

地面近くから生えている不要な枝なども切っておきましょう。

剪定完了!

今回は高さを抑えて、樹形を整え、葉が茂ったときにも風通しと日が当たりやすいような透かし剪定を行いました。
内側に空間ができたので、葉がついた時の全体のバランスが良くなるでしょう。
カエデの仲間は、風になびくようなやわらかな枝の広がりが風情を生み出します。今回、外側に広がる枝先はなるべく生かすようにしたので、葉がついたときには、モミジらしい自然な感じになるでしょう。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

※枝が見えやすいように画像処理しています。

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